民主主義の健全性を測る重要な指標の一つとして、投票率が挙げられます。世界各国の投票率を比較することで、各国の政治参加の度合いや民主主義の成熟度を知ることができます。本記事では、世界の投票率ランキングを概観し、日本の投票率との比較を行います。
世界の投票率ランキング
投票率の国際比較を行う際には、一般的に国政選挙(議会選挙や大統領選挙)の投票率が使用されます。以下に、世界の主要国における近年の投票率ランキングを示します。
1. オーストラリア:約92%
2. ベルギー:約88%
3. スウェーデン:約87%
4. デンマーク:約85%
5. ノルウェー:約78%
6. ドイツ:約76%
7. イスラエル:約75%
8. フランス:約74%
9. イギリス:約69%
10. カナダ:約67%
15. アメリカ:約62%
20. 日本:約52%
※日本は、2021年10月31日に行われた衆議院選挙の投票率
※各国は、2016年から2020年に行われた各国の国政選挙の投票率のデータです。
高投票率国の特徴
1. 義務投票制
オーストラリアやベルギーなど、上位に位置する国々の多くが義務投票制を採用しています。投票を法的義務とすることで、高い投票率を維持しています。
2. 政治文化
北欧諸国(スウェーデン、デンマーク、ノルウェーなど)では、市民の政治参加意識が高く、投票が市民の当然の責務とみなされる傾向があります。
3. 選挙制度
比例代表制を採用している国々(ドイツ、スウェーデンなど)では、小政党の議席獲得チャンスが高まり、有権者の選択肢が増えることで投票意欲が高まる傾向があります。
4. 投票の利便性
事前投票制度、郵便投票、電子投票など、投票しやすい環境整備を進めている国々が多く見られます。
日本の投票率の現状
日本の投票率は、国際比較において決して高いとは言えません。直近の衆議院選挙(2021年)の投票率は約56%で、戦後3番目に低い水準でした。参議院選挙においても、2022年の選挙で約52%と低迷しています。
日本の投票率低下の要因
1. 政治への無関心
特に若年層において、政治への関心が薄れている傾向が指摘されています。
2. 選挙制度への不満
小選挙区制の導入により、一票の格差や死票の増加など、投票の意義を感じにくくなっている有権者も存在します。
3. 候補者や政党の魅力不足
有権者にとって魅力的な候補者や政策が少ないと感じられることが、投票意欲の低下につながっているように思われます。
4. 投票環境の課題
投票所へのアクセスの問題など、投票しづらい環境も指摘されています。
日本の投票率向上に向けた取り組み
1. 選挙権年齢の引き下げ
2016年に選挙権年齢が18歳に引き下げられ、若年層の政治参加を促進する試みが行われています。
2. 投票環境の改善
期日前投票の拡充や、大学構内への投票所設置など、投票しやすい環境づくりが進められています。
3. 主権者教育の強化
学校教育における政治や選挙に関する教育を充実させ、若年層の政治意識向上を図っています。
4. ICTの活用
選挙情報のオンライン提供や、将来的な電子投票の導入検討など、テクノロジーを活用した取り組みも進んでいます。
結論
投票率の国際比較において、日本は決して上位に位置しているとは言えません。しかし、投票率の向上は一朝一夕には実現できるものではありません。政府や選挙管理委員会による制度的な取り組みはもちろんのこと、市民社会全体で政治参加の重要性を再認識し、投票文化を醸成していくことが求められます。
諸外国の成功例を参考にしつつ、日本の社会文化に適した形で投票率向上策を模索し続けることが、今後の日本の民主主義の発展には不可欠です。一人ひとりの市民が、自らの一票の重みを理解し、積極的に政治に参加することで、より健全な民主主義社会の実現につながるでしょう。
参考サイト
https://www.es-inc.jp/graphs/2021/grh_id011180.html
https://www.globalnote.jp/post-12889.html